安部龍太郎「等伯」

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久方ぶりの読書感想文です^^

私の読書好みを良くご存じのお世話になっている方が、安部龍太郎著「等伯」上下巻を貸して下さいました。

京都にまつわる、秀吉〜家康に好まれた襖絵師「長谷川等伯」の半生をつづった傑作です。

実は・・・、最後まで読み切っていません。最後数ページを残したままです。
というのも、これを読み切ってしまうと、ひょっとしたら等伯が亡くなるのではないか、とか、等伯とお別れしてしまうことになるのではないか、等と考えてしまって、寂しくなって、読み切ってしまえないのです・・・。(何とも情けないですが)


それほどに、素晴らしい豊かな世界に引き込んでくれる作品でした。(読み切っていないのでまだ過去形にはできませんがっ!!!)


石川・能登に生まれた長谷川信春(等伯)。武家の出身ながら、絵の才能と次男坊だったこともあり、絵仏師・染め物師の長谷川家に養子に出されます。その辺りから物語は始まります。

壮絶な半生。狩野派をもしのぐ勢いを見せた長谷川派 当主。武家の出身であるがための苦悩と情熱。

さぞや、ドラマチックで大胆な小説・・・、と思いきや、静かで淡々として、感情の起伏にまかせた記述など殆どなく・・・。物語がドラマチックに展開すればするほど、物語の口調は淡々と静かになっていく感じがします。
抑えられた、計算されつくした日本語の文章。

出身地の能登半島の松林の情景がそのまま文体となっているような、静かで美しい日本語の固まりのような小説でした。

その静かな美しさが、逆に信春(等伯)の熱い情熱を引き立たせているようです。
読み進めていくうちに、白い襖(文体)に、赤い信春(物語)を描いていっているような、本当にきれいな小説でした。

生涯を現役でひたすらに絵画への情熱を煮えたぎらせた等伯。決して妥協は許さず、自身の感性に正直でまっすぐに自分へ向かった芸術家。
当時は、権力者へのお抱え的な絵師が多かったのではないかと推測するにあたっても、等伯の異質性、技術ではなく「芸術」へ向かった思考は激しく情熱的です。

私自身への問いかけでもあるかのような生涯に、等伯に終わりが来て欲しくない、いつまでも突き進んでいて欲しい、そんな思いにさせてくれました。


秋、京都にはたくさんの等伯作品があります。由来を知り、その生涯を垣間見ながら作品を鑑賞出来ることに喜びと感謝をしております。
2014/11/01(Sat) 12:02:22 | 読書・本

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